⑪「吸収する精神(無意識)」の時期に必要な環境〈5〉

★2歳★

確実に意識の割合が無意識の割合よりも多くなったら、以下の感覚教具を使い始め、今まで吸収して溜め込んできた様々な感覚的印象を本格的に整理、秩序化していくとともに、感覚をより良く洗練させ、知性をさらに発達させていきます。

感覚教具には、知性を発達させるための3つの操作方法があります。

①ペアリング

2つのものを比較して、色や形、匂い、重さなど、1つの性質を取り出し、それが同じものをペアにする

②グレーディング

3つ以上のものを比較して、色や形、匂い、重さなど、1つの性質を取り出し、順番にする

③ソーティング

3つ以上のものの中から、色や形、匂い、重さなど、1つの性質を取り出し、同じもの同士に分類する

円柱さし

☆直接目的☆
視覚を通して「次元」の違いを知る

☆間接目的☆
書くことへの準備(つまみの持ち方が鉛筆の持ち方につながる)
算数教育への準備(10本の円柱→十進法につながる)

穴のあいた木製のブロックに、つまみのついた10本の円柱が納まっているもので、A、B、C、C’の4つの種類があります。

・円柱さしA→円柱の高さ(1次元)だけが10段階に変化する

・円柱さしB→円柱の太さ(2次元)だけが10段階に変化する

・円柱さしC→円柱の高さ太さ(3次元)が10段階に変化する

・円柱さしC’→円柱の太さはCと同様に、高さはCとは逆に、10段階に変化する(3次元)

円柱さしの操作方法には、ペアリングとグレーディングの2つがあります。

☆ペアリングの手順☆
①円柱さしBを、持ち方(両手でお腹にくっつけて持つ)を示して机上に運び、最も太い円柱が左側にくるようにして、子どもの前に置く。

②左側の円柱から、つまみ方(親指、人差し指、中指でつまむ)を見せながら1本ずつ抜き出し、ブロックの向こう側に(手前だと落ちてしまって集中が途切れるから)順不同に並べる。

③任意の円柱を1本取り、ブロックの穴と見比べてぴったりの穴に入れる。他の円柱も同様にして、全ての円柱を穴に入れる。

※円柱さしBを使うのは、円柱の高さが一定であるため、ブロックの穴の面積だけに子どもの注意力を集中させることができるからです。

円柱さしBで十分活動ができるようになったら、その他の円柱さしでも同様に行っていきます。

☆グレーディングの手順☆
①円柱さしCを、持ち方(両手でお腹にくっつけて持つ)を示して机上に運び、最も大きい円柱が左側にくるようにして、子どもの前に置く。

②左側の円柱から、つまみ方(親指、人差し指、中指でつまむ)を見せながら1本ずつ抜き出し、ブロックの向こう側に(手前だと落ちてしまって集中が途切れるから)順不同に並べる。

③ブロックは使わないことを伝え、机の端かサイドテーブルに置く。

④順番に並べていくことを伝え、最も大きい円柱を左端にして、左から右へ順に、円柱と円柱をぴったりくっつけて並べていく。

⑤並べ終わったら、子どもに並んだところをじっくり見せて印象づけてあげる。

※グレーディングの場合、円柱1本1本の違いがはっきりとわかるものの方が子どもには理解しやすいため、円柱さしCから始めます。

色つき円柱

☆直接目的☆
視覚を通して各次元の関係を比較する

☆間接目的☆
算数教育(十進法、グラフ)への準備

「円柱さし」の円柱と同じ寸法の木製の円柱が10本ずつ、種類ごとに色分けされ、同じ色のふたを持つ木箱に入っています。「円柱さし」と違ってつまみはありません。色分けされていることによって、それぞれの特徴が、よりはっきり認識できるようになっています。

箱の名称円柱の色次元円柱さしとの関連
青の箱1次元円柱さしAと同じ
赤の箱2次元円柱さしBと同じ
黄色の箱黄色3次元円柱さしCと同じ
緑の箱3次元円柱さしC’と同じ

色つき円柱の操作方法はグレーディングです。

☆手順☆
黄色の箱を机上に運び、ふたを開ける(ふたは、色がついている面を上にして置く)。

②円柱を1本ずつ取り出し、箱の向こう側に(手前だと落ちてしまって集中が途切れるから)順不同に並べる。

③箱は使わないことを伝え、机の端かサイドテーブルに置く。

④順番に並べていくことを伝え、最も大きい円柱を左端にして、大きさの順に左から右へ、円柱と円柱をぴったりくっつけて並べていく。

⑤並べ終わったら、子どもに並んだところをじっくり見せて印象づけてあげる。

⑥円柱を順不同にして、最も大きい円柱から1本ずつ、箱の中に渦巻き状に入れていく。

※グレーディングの場合、円柱1本1本の違いがはっきりとわかるものの方が子どもには理解しやすいため、円柱さしCと同じ寸法の円柱が入った黄色の箱から始めます。

黄色の箱で十分活動ができるようになったら、その他の箱でも同様に行っていきます。

ピンクタワー

☆直接目的☆
視覚を通して「3次元(立体)」の変化を捉える

☆間接目的☆
算数教育への準備(10個の立方体→十進法につながる)

ピンク色に塗られている10個の木製の立方体を積み上げてタワーをつくります。10個の立方体の1辺は1cmずつ短くなっています。

ピンクタワーの操作方法はグレーディングです。

☆手順☆
①ラグを敷く。 ※ラグの敷き方については、後述の「『運動の敏感期』に対応する物的環境」のところで詳しく説明します。

②順番に積み上げられているピンクタワーをよく見る。

③立方体の持ち方(小さい立方体は親指、人差し指、中指で持ち、大きい立方体は左手を底面に添えて、両手で持つ)を示しながら、最小の立方体から順に1個ずつラグに運ぶ。

④運んだ立方体を、ラグの大人側上に(ラグの子ども側上は、立方体を積み上げる場所として空けておく)、小さい立方体が大きい立方体の陰に隠れないようにしながらバラバラに置く。

⑤ラグの子ども側上で、最大の立方体を一番下にして、最小の立方体まで順番に積み上げる。積み上げる時、上の立方体は下の立方体の真ん中に置く。

⑥タワーが完成したら、子どもと一緒に様々な角度から眺め、その順序性を印象づける。

⑦最小の立方体から順に取ってラグの大人側上にバラバラに置き、最大の立方体から1個ずつ元の場所に運んで積み上げる。

茶色の階段

☆直接目的☆
視覚を通して「2次元(面)」の変化を捉える

☆間接目的☆
算数教育への準備(10本の角柱→十進法につながる)

太さが段階的に変化している茶色に塗られた10本の木製の角柱を、最も太い角柱が左端に、最も細い角柱が右端になるように並べます。

茶色の階段の操作方法はグレーディングです。

☆手順☆
①ラグを敷く。 ※ラグの敷き方については、後述の「『運動の敏感期』に対応する物的環境」のところで詳しく説明します。

②順番に並べられている茶色の階段をよく見る。

③角柱の握り方(大きい角柱は左手を底面に添えて、両手で持つ)を示しながら、右端の最も細い角柱から順に1本ずつラグに運ぶ。

④運んだ角柱を、ラグの上方に(ラグの下方は角柱を並べる場所として空けておく)、正方形の面が子どもによく見えるような向きで1本ずつ順不同に並べる。

⑤ラグの子ども側上で、最も太い角柱が左端に、最も細い角柱が右端になるように順番に並べる。この際、角柱はラグの縁を利用してまっすぐ並べ、角柱同士はぴったりくっつける。

⑥並べ終えたら、子どもと一緒に様々な角度から眺め、その順序性を印象づける。

⑦最も細い角柱から順に取ってラグの上方に順不同に並べ、最も太い角柱から1本ずつ元の場所に運んで並べる。

長さの棒

☆直接目的☆
視覚を通して「1次元(線)」の変化を捉える

☆間接目的☆
算数教育への準備(10本の角柱→十進法につながる)

長さが段階的に変化している赤色に塗られた10本の木製の細い角柱を、最も長い角柱が一番上に、最も短い角柱が一番下になるように並べます。

長さの棒の操作方法はグレーディングです。

☆手順☆
①ラグを2枚並べて敷く。 ※ラグの敷き方については、後述の「『運動の敏感期』に対応する物的環境」のところで詳しく説明します。

②順番に並べられている長さの棒をよく見る。

③棒の持ち方(棒の両端を挟んで持つ。両端を持つことができない長さのものは、左手は棒の左端を持ち、右手は無理なく届く位置を下から持つ)を示しながら、最も短い棒から順に1本ずつラグに運ぶ。

④運んだ棒を、左のラグの左端に棒の左端を合わせて1本ずつ順不同に並べる。

⑤右のラグの左端に、最も長い棒が一番上、最も短い棒が一番下になるように順番に並べる。この際、棒同士はぴったりくっつける。

⑥並べ終えたら、子どもと一緒に様々な角度から眺め、その順序性を印象づける。

⑦最も短い棒から順に取って左のラグの左端に棒の左端を合わせて1本ずつ順不同に並べ、最も長い棒から1本ずつ元の場所に運んで並べる。

色板(いろいた)

☆直接目的☆
色を識別する

☆間接目的☆
色の美しさに気づく

中央の部分に様々な色が塗られている小さい板で、同じ色のものをペアにします。

色板の操作方法はペアリングです。

☆手順☆
①ラグを敷く(ラグの上で行う場合)。 ※ラグの敷き方については、後述の「『運動の敏感期』に対応する物的環境」のところで詳しく説明します。

②色板の第1箱(赤、青、黄の3色の色板が入った箱)を机上またはラグに運ぶ。

③色板の持ち方(色のついた部分に触れないよう、上下の枠を持つ)を示しながら、1枚ずつ取り出してバラバラに置く。

④同じ色のものをペアにして、左上方に並べて置く。

⑤残りの色板も同様にしてペアをつくり、最初のペアの下に並べる。

⑥ペアにした色板をバラバラに置きなおし、同じ色が続くように箱に戻す。

⑦箱を元の場所に運ぶ。

※第1箱で十分活動ができるようになったら、第2箱(赤、青、黄、橙、緑、紫、桃、茶、灰、黒、白の11色の色板が入った箱)でも同様に行っていきます。

触覚板(しょっかくばん)

☆直接目的☆
触覚を通して、粗さと滑らかさに気づく

☆間接目的☆
書くことへの準備(手の動きのコントロール→文字を書くための軽やかに動く手の獲得)

ざらざらの部分とつるつるの部分が半々の板(触覚板1)を触って、粗さと滑らかさの違いを知っていきます。

※触覚板には以下の4つの種類があります。

・触覚板1→ざらざらの部分とつるつるの部分が半々の板

・触覚板2-①→ざらざらの部分とつるつるの部分が交互に並んだ板

・触覚板2-②→粗さが5段階に変化する板

・触覚板3→粗さがそれぞれ違う板(2枚ずつ、計10枚)

触覚板の操作方法には、ペアリングとグレーディングの2つがありますが、この段階では行いません。

☆手順☆
①触覚板1を机上に運び、ざらざらの部分を子どもの側にして置く。

②ビロード張りの箱を、指先が熱くなるまでこする(触覚を敏感にするため)。

③左手で板の隅を軽く押さえ、右手の4本の指先で、ざらざらの部分を向こう側から手前に手首に力を入れずに軽く2~3回なでる。

④同様にして、つるつるの部分もなでる。

※感覚教具には、「必ずこの順番通りに関わらなければならない」という決まりはありません。しかし、「操作の簡単なもの、教具同士で関連性のあるもの、性質の孤立化(一つの性質だけが強調されている)が明確なもの、誤りの訂正が含まれているもの(子ども自身が自己の誤りに気づくことができるように設計されているもの。例えば、「円柱さし」はいずれかの1本の円柱を誤った穴にはめ込んだ場合、最後の1本が入らなくなり、大人が指摘しなくても子ども自身で誤りに気づくことができるようになっている)から、操作の複雑なもの、性質の孤立化が不明確なもの、誤りの訂正が子ども自身の感覚的判断に委ねられるものへと進む」という「系統性」があります。そのため、感覚教具は「円柱さし」から使い始め、「円柱さし」と関連のある、「ピンクタワー」、「茶色の階段」、「長さの棒」へと進んでいくのが一般的です。

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