②「自分から進んで繰り返すこと(自発的活動)」によって、自立、発達していく

子どもは誰からも命令されたり指示されなくても、自ら立ち上がろうとしたり、歩こうとしたりしますが、すぐにそれができるようになるわけではありません。転んで、そしてまた立ち上がろうとする…それを繰り返してできるようになっていきます。誰かから「やりなさい」と言われなくても、自分からやろうとし、できるようになるまで何度も何度も繰り返すのです。

ではなぜ、子どもは「自分から進んで繰り返すこと(自発的活動)」によって自立、発達するのでしょうか?

脳科学の視点から見ると、「何かができるようになること(つまり、自立、発達していくこと)」とは、「脳にあるニューロン(神経細胞)同士がつながり、そこに瞬時に電気信号が流れるようになること」です。

ニューロン同士が単につながっただけでは、そこに「瞬時に」信号は流れません。つながった部分にカバーがないと、信号が混線、漏洩してしまうからです。そのため、「髄鞘化(ミエリン化)」という現象が起こります。「髄鞘(ずいしょう)」という脂肪の鞘(さや)をつくって回路を覆い、信号が混線、漏洩することなく素早く伝わるようにするのです。「何度も繰り返す」ことによって、それに関連する回路に信号が流れれば流れるほど、髄鞘は分厚く丈夫になります。そして、信号が「瞬時に」流れるようになり、繰り返していたことができるようになるのです。「何度も繰り返す」ためには、誰かから強制されるのではなく、自分から興味を持って取り組む必要があります。そのため、子どもは「自分から進んで繰り返すこと(自発的活動)」によって、自立、発達するのです。

「何度も繰り返す」ことの重要性は、ニューロン同士の接合点である「シナプス」の観点からも説明することができます。誕生後、主に遺伝子の導きによって、まず、将来必要になる数の約2倍のシナプスがつくられると言われています。しかし、そうなると、つながりが多すぎて重複が生じ、効率が悪くなり、情報も正確には伝わりにくくなるため、「シナプスの刈り込み」という現象が起こります。繰り返し使われる活動性の高いシナプスは残し、使われない活動性の低いシナプスはなくすことによって、ニューロン同士のつながりをすっきりさせ、成熟した機能的な神経回路をつくるのです。先述したように、「自分から進んで繰り返すこと(自発的活動)」によって、それに関連する回路が髄鞘化し、丈夫になります。そのため、これらは刈り込まれることなく残り続けることができます。高速道路が1本できて、何本もあった脇道が使われなくなるようなもので、「何度も繰り返す」ことによって、丈夫にした神経回路を維持し、脳をより良く洗練することができるのです。

タイトルとURLをコピーしました