⑤「肯定的な接し方」が大切

大人が子どもに対して「否定的な接し方」をしていると、子どもは自身の力(自己教育力)によって自立、発達することができなくなり、「逸脱発達」してしまいます。

子どもが自己教育力によって自立、発達し、「正常化」するためには、大人が子どもに対して「肯定的な接し方」をすることが大切です。

肯定的な接し方とは、 

子どもに何をしてはいけないかではなく、何をすべきかを示すこと

決して屈辱感を与えないこと、非難しないこと

です。

具体的にまとめると、以下のようになります。

①命令や要求よりも、気づかせる、思い起こさせる

…例えば、「座りなさい」と命令する代わりに、「食べる時には座ろうね」と言うようにします。命令するよりも、目的の動作やルールを子どもに思い出させる方が効果的であり、子どもの自立も促されます。

②子どもの「努力した過程」を認める

…「上手にできたね」や「よくできました」など、「結果」という表面的なことだけを見て褒めるよりも、「一生懸命頑張ってたね」など、子どもの「努力した過程」を認める言い方をする方が効果的です。

「過程」を認められる経験を重ねていくうちに、子どもの自己肯定感が高まります。上手くできたかどうかに関係なく、あるがままの自分を認めることができるようになるのです。「自分は頑張ればできる」と思うようになり、物事への興味関心がどんどん強まり、人に言われなくても自分から行動できるようになります

③子どもに、「してはいけないこと」ではなく、「してもいいこと」を伝える

…例えば、「テーブルに絵の具塗らない!」と叱りつける代わりに、「白い紙に絵を描くことができるよ」と言うようにします。「~しちゃダメ!」と、否定的な言い方をするのではなく、「では何ができるのか」ということを伝えることによって、子どもの自信と自立が促進されます。

④「はい」か「いいえ」だけで答えられる質問を、より選択肢がある言い方に置き換える

…例えば、「公園に行きたい?」と言う代わりに、「今日は何をしたい?」と言うようにします。また、「今日は公園か動物園に行くことができます。どちらにしますか?」など、2つの選択肢を与えることも効果的です。「自分で決める」経験を重ねることによって、子どもの自立が促されます。

⑤肯定的なしつけを心掛ける

…子どもに何かをしないように言う代わりに、それを正しく行う方法を示すようにします。例えば、子どもがおもちゃをしてほしくないやり方で使っていたら、「そんな使い方しないの!」と言う代わりに、「こうやって使ってみたら?」と言って、やって見せるようにすると、そのおもちゃをどのように使うか、どのようにしたら美しく保てるかについての対話が促進されます。

いつも「ダメ!」や「やめて!」ということばで子どもの行動を変えようとしていると、道路などで本当に子どもに危険が差し迫った時、それらのことばは子どもにとって意味を成さなくなる恐れがあります。

⑥正しいことばを使用する

…子どもが「バナナ」のことを「ナナ」と言うなど、正しい言い方ではなく別の名前や略語を使用している場合は、間接的に修正します。子どもが「ナナがほしい」と言ったら、大人は、「もちろんいいよ。バナナをあげるね」などと、「バナナ」という正しいことばをきちんと使って答えるということです。これは、子どもに敬意を表していることにもなります。子どもを大人と対等な人間だと考えているから、子どもと一緒に本当のことばを使うのです。

間接的に修正するため、子どもは新しい単語を話したり試したりする自信を妨げられることなく、自立に向かっていくことができます。

⑦具体的で特定のことばを使う

…子どもに動物や花など、何かの名前を伝えたい時は、例えば、「ワンワン」の代わりに「犬」、その次には「犬」の代わりに「ジャーマンシェパード」と言うなど、できるだけ具体的で特定のことばを使うようにします。これは、子どもがこの世界のあらゆるものを区別していくのに役立ちます。

以上の7つの「肯定的な接し方」には、子どもへの敬意や子どもを尊重する姿勢、子どもを丸ごと受容する姿勢があります。つまり、「肯定的な接し方」とは、「子どもを『大人と対等で、一個の人格を持った存在』として接する」ということなのです。

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