「運動の敏感期」に対応する人的環境
・子どもが身体を十分に動かせる環境を保障する。
例えば、子どもが「ティッシュを箱からなくなるまで引っ張り出す、蛇口をひねって水を出したり止めたりする」のは、いたずらをするためではなく、「握る、握ったものを引っ張る、手首をひねる」といった、自立に必要な運動機能を獲得するためです。そのため、叱ってその行為を禁止するのではなく、子どもが獲得しようとしている動きは何かを理解し、その動きを練習できる活動を用意してあげましょう。
・共同体の一員として日常生活に参加させる。
1歳半くらいになると、歩行が安定し、大人の真似をしたいという「模倣期」を迎えます。この時期からは、共同体の一員として日常生活に参加させてあげましょう。そうすることで、自立に必要な動きを獲得できるだけではなく、自らを取り巻く環境の風習や習慣、生活様式、ふるまいなどを吸収して環境に適応していくことができます。「その時代のその土地の人」になっていくことができるのです。
「運動の敏感期」に対応する物的環境
・「ムナリモビール」(誕生~2か月くらいまで)
☆目的☆
凝視ができるようになる
白と黒のコントラストでできているモビールです。
・「ゴッビモビール」(2か月~3か月くらいまで)
☆目的☆
追視ができるようになる
球体の色がグラデーションになっているモビールです。ムナリモビールによって凝視ができるようになったら、今度はゴッビモビールで追視の練習をしていきます。
・「鏡」(2か月くらいから)
☆目的☆
鏡にうつる様々な「動き」を見ることによって刺激を受ける
首が動くようになったら壁に鏡を設置します。自分の動きや大人の動きが見えるため、それが子どもの刺激になります。
・「つり輪」や「まり」など、見て触るための物(3か月くらいから)
☆目的☆
手を伸ばして物を握ったりつかんだりできるようになる
3か月くらいになると、腕の筋肉が発達して物を見るだけでは物足りなくなり、見た物に触れようとするようになります。そのため、子どもが手を伸ばして握ったりつかんだりできる物を用意します。
・「ガラガラ」(物を握るようになってから)
☆目的☆
寝返りを促す
グーにしたりパーにしたりといった手の開閉の動きを意志通りにできるようになる
布団などの横にマットを敷き、そこにガラガラを置くことで、「寝返り」を促します。また、ガラガラを握ることによって、グーにしたりパーにしたりといった手の開閉の動きを意志通りにできるようにしていきます。
・「登り台」(5か月、6か月くらい)
☆目的☆
わずかな段差を昇り降りすることができるようになる
5~6か月くらいになると、ずりばいをするようになります。登り台を用意し、その上にぬいぐるみやボールなどを置いて、子どもが自発的に段差を登るようにします。
・「ボール落とし」(6か月くらい)
☆目的☆
座って活動できるようになる
ボールをつかんで穴に落とすことができるようになる
6か月くらいになると、座ることができるようになり、手はますます活発に動くようになります。そのため、座って手を動かしながら楽しめる「ボール落とし」を用意すると良いでしょう。
・「重いスツール」(9か月くらい)
☆目的☆
つかまり立ちと伝い歩きができるようになる
9か月くらいになると、つかまり立ちをしようとするようになるため、子どもがつかまり立ちしやすいサイズで、体重を掛けても大丈夫な重さがあるスツールを用意すると良いでしょう。
つかまり立ちができるようになったら、今度はそこに沿って歩くようになります。これが「伝い歩き」です。スツールは、グルグルとエンドレスに伝い歩きができる形状になっているため、壁にくっつけずに設置します。
・「はめこみ立体」(9か月くらい)
☆目的☆
両手を使って活動できるようになる
はめることができるようになる
立体を容器に入れたり、容器から外したりします。
・「トラッカー」(つかまり立ちができるようになってから)
☆目的☆
立ちながら手を使えるようになる
ボールをつかんで最上部の穴に落とします。
・「ボール押し」(1歳くらい)
☆目的☆
ボールを手のひらで押して穴に落とすことができるようになる
グッと力を入れて押さないとボールが落ちない設計になっています。
・「チップ落とし」(1歳くらい)
☆目的☆
手首をひねることができるようになる
「物の永続性(物は、隠れて見えなくなってもそこに存在し続けていること)」を理解する
手首をひねってチップを穴に落とします。穴のある部分は蓋になっていて、落としたチップは蓋をひっくり返して取り出します。そのため、「物の永続性」を理解することができます。
・「立体落とし」(1歳くらい)
☆目的☆
立体を穴に合わせて落とすことができるようになる
様々な形の立体を、その形の穴に落とします。
・「ハンマートイ」(1歳くらい)
☆目的☆
叩くことができるようになる
ハンマーでボールを叩きます。
・「スライド式蓋つき箱」や「蓋開け箱」など、取手をつまんで蓋を開ける物(1歳くらい)
☆目的☆
取手をつまんで蓋を開けることができるようになる
箱の蓋を、取手をつまんで開けます。
・「パズル」(1歳くらい)
☆目的☆
つまみを持って枠から外したりはめたりできるようになる
台の枠に、その枠と対になっているものをはめたり、外したりします。
・「リングさし」(1歳くらい)
☆目的☆
手を意思通りにコントロールできるようになる
リングをつまんで棒にさすことができるようになる
様々な形の棒にリングをさします。
・「ペグさし」(1歳くらい)
☆目的☆
ペグをつまんで穴にさすことができるようになる
ペグを指先で持ち、穴にさします。
・「貼る」(1歳くらいから)
☆目的☆
のりを使った貼り方を知る
☆用具☆
・トレイ
・下敷き
・小皿に入れた貼る紙(複数枚)
・容器に入れた1回分程度の量ののり
・小皿に入れた濡れたスポンジ
・台紙
☆手順☆
①貼る紙を1枚小皿から出して置く。
②のりを指先につける。
③指先につけたのりを貼る紙につける。
④指先についたのりを濡れたスポンジで拭く。
⑤貼る紙を持ち、台紙に貼る。
⑥手のひらで、貼った紙を台紙に押さえる。
⑦スポンジで下敷きを拭く。
※この活動で子どもが面白いと感じやすいのは、紙が台紙にくっつくことです。そのため、この部分を強調してやって見せるようにします。